CASE STUDY

事例

プラクティカルなイノベーション創出~着眼大局、着手小局で新事業の成功の兆しを掴み取る~

Introduction

GAFAに続き中国のBATHの台頭が世界を動かし、日本企業の存在感は薄れてきていることは誰もが感じていることと思います。残念ながら日本の主要企業は、品質の高い製品を提供する管理能力には優れていますが、従前のビジネスモデルにとらわれてしまっていたたことがその要因とも言われています。
かかる状況下、イノベーション推進組織の立ち上げ、新事業開発部門の増強、CVCの設置、オープンイノベーション推進、欧米型デザイン思考の学習、など様々な試みを始めていますが、成果が出ているとは言い難いのが現実です。では、他にどんなアプローチや方法があるのでしょうか?
言うまでもイノベーションに関わらず、競争優位の源泉を生み出すのは、AIではなく人財・組織であり、更に、継続的なイノベーション創出には、それに適合した一流のプロセスと組織文化が欠かせません。
「イノベーション=発見力×実行力×マインド」と示されますが、全て人と組織が根幹にあり、深く難しい複雑な課題を解決する糸口をここで見つけることを可能にします。

化学会社A社(東証一部)「顧客が直面していた課題」

会社の課題)内部留保は厚いが魅力的な投資案件が少なく、M&Aによる事業開発には取り組んできたものの、オーガニックな成長ができていないことに経営は強い危機感を抱いていており、長期経営計画では5年後に新事業比率を5%に引き上げるという意思を明確にしていた。
組織・人財の課題)M&Aによる成長に偏っていたため、R&D部門ではイノベーションに挑戦しようというモチベーションが低下しており、イノベーション推進組織を作り、新事業アイディアのの社内公募をしても研究テーマの域を出ないものや本気度が足りないテーマしか出てこなかった。更に、アイディアを一緒に磨くという感覚がマネジメントに欠けており、従来のゲート管理的な難癖付けのレビューにより、アイディアは潰されていって、新たなテーマ提案も出なくなるという悪循環に陥っていた。

Solution(解決策)

本質的課題の抽出〜人財・組織への打ち手;CTO、およびイノベーション推進キーメンバーへのデプスインタビューを実施。技術の棚卸はできているが、人財の棚卸ができておらず、組織の人財構造分析を通じ、イノベーション創出の資質のある人財を抜擢し、最適なプロジェクトチームを編成した。
発見力)事業のマクロ環境に対する視野が狭く、自分の見えている世界でしか将来動向を捉えられていないため、シナリオプランニングの知見や情報の刺激物を投入し、事業機会の探索、およびアイディアジェネレーション活動をリードした。また、新たな事業領域における市場セグメントを再定義し、当該市場において理想とするリードカスタマー(グローバルトップ/イノベーター)を発見することに取り組んだ。一方、直接顧客の顕在ニーズにしか対応できていないことがわかり、最終製品のユーザーの行動観察に取り組むことで、潜在ニーズを想像する感覚を養った。
これらの活動を通じ、理想とする顧客の戦略的課題に対する仮説、それを解決するソリューション(技術・サービス)仮説を事業アイディアの核とした。
実行力)クライアントのメンバーには現場の担当者からアプローチしようとしていたが、当該顧客のCTOへアプローチするよう焚きつけた。技術的価値を経済的価値(顧客の利益向上)に翻訳し、仮説的提案書の作成を協働することで、ようやくCTOとのアポイントを取得することにコミットしてくれた。その後、幹部も腕まくりで協力してくれたこともあり提案は実行された。
その結果、当該顧客の戦略課題に合致するものであると価値の受容性が認められ、その後技術交流会での相互理解を通じ、クライアントは共創パートナーと認められ、新事業のファーストカスタマーと契約することができた。
この成功事例を再現可能なものにするため、イノベーション推進部門全体でのデザイン思考の共通言語化、リーンスタートアップ型プロセスへの改善、会議体やレビューの仕方の改善、などイノベーティブな組織文化変革に向け、草の根活動が継続している。
マインド)イノベーションは新しいことを発想するだけではなく新しい事を実行する事であり、そのためには新しいやり方に挑戦することが必要だと気付いてくれた。人は間違うことを恐れ、情報収集や分析に時間をかけすぎてしまう。潜在ニーズを引き出すには仮説的提案やプロトタイプデザインという叩かれ台が必要であり、時には合理的解を導くのではなく正しい試行錯誤から矛盾を解消する妥当解を導くことが求められる。
人は無意識に正解を求めるがあまり、安心・安全な場に身を置こうとするが、コーチングによって志やチャレンジ精神を高め、イノベーティブなマインドや行動に変化していった。

Approach

プラクティカルなイノベーション創出

Conclusion(結論)

イノベーションを推進する組織や環境(箱)は作った。MOTやデザイン思考を学んだ。コンサルティング会社からのリサーチレポートもある。しかし、それらはアリバイ作りで何も成し遂げてい無いということを目の当たりにしてきた。
結局のところ「人づくり」に立ち戻ることが本質ではないか。
イノベーション創出の資質がある人財は組織の中の極少数ではあるが、客観的かつ科学的な分析で発掘することができる。表面的な知識・スキルで見てはいけ無い。そのダイヤの原石となる人財を核にした最適組織を磨き上げ、新たな顧客創造と新たな価値の創造をプラクティカルに実行し、Quick win, Small Winを生み出すことがイノベーションへの近道である。
一方で、与えられた経営資源の中でやりくりしなければなら無い現実もある。その資質が高く無い人財も、イノベーションを生みやすい環境、プロセス、創造的な組織文化に変えることができれば継続的にイノベーションを生み出す確率が上がる。
忘れてはなら無いのは、イノベーションは行動することでしか起きないということ、そしてQuick win, Small Winがなければ後に続く人が出なくなるということ。
経営からは夢のある新事業を期待されるかもしれ無いが、GAFAのように市場創造ができる天才は真似できない。
ドラッガーの名言通り、「事業とは顧客を創造すること」という原点に戻り、顧客起点でプラクティカルにイノベーションを生み出すのが日本人らしいと考えるべきである。

この記事をシェアする