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コラム

第二回 構造的な問題1:役員レベルの問題

2020.07.31

今回は、第1回で取り上げた「大企業が抱える構造的な問題」の中の第一の問題=役員レベルの問題について書きます。
>>第一回 パフォーマンスモデルとパフォーマンスディベロップメントはこちら

日本企業はイノベーションを起こしてきたのか 2012年くらいから弊社が手掛けてきたサービスの一つに「ダイアローグマット™を使ったWAY、理念浸透サービス」というものがあります。 2000年代に入って、企業のグローバル化が急速に進展し、海外に生産工場や販売拠点を作る動きが加速しました。現地で人材を採用し体制を整えたメーカー様ですが、日本では「一流企業、有名企業」であっても、海外では必ずしも知名度が高くなかったりするため、現地で採用した社員に「我が社の歴史や大事にしてきた価値観を伝える」という活動が必要になりました。そこで、私たちが提供したのは大きなポスターにその会社の創業からの歴史を絵や写真を貼り付け、どこでどのようなことが起こったか、歴史を追体験してもらいながら、なぜ自社の「理念」や「WAY」が生まれてきたのか「対話」を通じて理解を深めていただく、対話促進ツール=“ダイアローグマット™”という商品です。
このツールを使って国内拠点、海外拠点を行脚し、現地のリーダーをファシリテーターに育てていくというプロジェクトを30社くらいの企業に提供してきました。

社内のキーパーソンにインタビューを行い、資料を集めて歴史を振り返るマットを制作しているうちに、あることに気付いてしまいました。それはほとんどの企業で1980年以降大きなイノベーションが生まれていない、ということです。もちろん、1980年以降も新製品は次々と生み出されています。しかしながら、抜本的なイノベーションがあったかというとそうではなく、改善、改良レベルのものが多い、ということに気付いてしまったのです。

皆様に伺います。皆さんの会社ではいかがでしょうか?1980年以降も、それまでにはない新しい技術などを自分たち自身で生み出せているでしょうか?
それまでの技術の改善、改良、焼き直しに止まっていたりしませんか?まったくの新しい顧客価値を作り出して成功した事例がありますか?

もう一つ興味深いデータがあります。 帝国データバンクの調べ によれば、2020年1月時点での、上場企業の社長の平均年齢は58.7歳、60代が43.9%を占めるそうです。58.7歳と言えば、1961年生まれ、大卒であれば、1984年に社会人になった計算です。世代的には「新人類」と呼ばれる世代です。
私もまさに1984年に社会人になりました。そこから何を経験してきたか?1980年代、昭和の最後の5年間は経済が右肩上がりだった最後の時代で、「Japan as No.1」などという本が出版されたり、日本の不動産会社がニューヨークのロックフェラーセンターを買収したというようなニュースが流れたり、日本が元気だった時代です。1989年のバブル崩壊にむけて「イケイケ」の時代であり、ジュリアナ東京がこの時代の象徴です。
何か特別なことをしていなくても「イケてる」感覚で満たされ、「先行きは明るい」と誰もが信じていた時代です。現在58.7歳の社長であれば、20代にそのような経験をしてきたハズです。そして1989年のバブルの崩壊。しかし、世の中が一気に暗くなったわけではありません。「まあ、数年すれば元に戻って経済はまた成長軌道に乗るのではないか」と漠然とした楽観的期待がありました。でもなかなか戻らない、あれっ、どうしたんだろう?と思いながら30代を過ごしたハズです。そして2000年代に入ります。ここからは皆様の記憶にもある通りひたすら横這い状態です。働き盛りの40代に、ずっと横這いの時代を過ごしてきたのが、58.7歳の社長です。

ここでまた皆さんに質問です。みなさんの会社の社長はなぜ社長になったのでしょうか?役員の方々はなぜ役員になっているのですか?経済横這いの時代に何か革新的なことを生み出したからですか?

変革型リーダー?それとも、調整型リーダー? 私たちの研修サービスの中で「選抜型次世代経営者育成研修」というものがあります。次世代経営者にふさわしい資質をもった人を部課長層から選抜し、研修とタフアサインメントの組み合わせで時間をかけて経営人材に育成するプログラムです。 このプログラムの冒頭で、マインドセット・セッションを長年担当してくださっている伊藤講師は、次世代経営陣候補の受講生に三枝匡さんの著書を読ませた上で「あなたは調整型のリーダーになりたいのか、変革型のリーダーになりたいのか、どっち?」という質問をぶつけます。すると9割くらいの人は変革型リーダーを目指したいと答えます。そしてそのあと、いろいろな事例を挙げて変革型リーダーの仕事や、変革型リーダーが味わうであろういろいろな苦労をさんざん話した上で、「自分自身は本当はどっち向きだと思うの?」という話をすると、割合が逆転して9割くらいの人は「自分は本質的には調整型かもしれません」と言い始めます。「みなさんの上司はどっちのタイプ?」「皆さんの会社の役員は?」「社長は?」と聞いていくと、ほとんどの企業で「調整型」だ、という答えになります。

イノベーションが生まれない理由 いよいよ本題に入ります。日本の大企業がなかなか変革できない理由はここにあるのではないか、すなわち、現在の社長および役員などの経営陣のみなさまが、40年間近くに渡る会社生活の中で大きな成長の芽を作った経験がないまま、経営の仕事に携わっているからではないか、という仮説を持つに至りました。

調整型リーダーが数多く生まれる背景についてはもう少し解説する必要があるかもしれません。講義中の伊藤講師の投げかけは以下のようなものです。

そもそも昭和の時代、なぜ右肩上がりで成長できたのか?日本の企業が優れた技術をもっていたからなのか?日本人が勤勉だったからなのか? この問いに対する伊藤講師の見識については、私と伊藤講師のWEBINAR をご覧になって頂きたいのですが、要は1980年当時、日本では給与水準が低く、先進国に比べて人件費が低かったためにコスト競争力が高く、それが競争優位性の源泉であったに過ぎないのではないか。もちろん技術力とか勤勉さが無かったわけではないのですが、ほんの一側面に過ぎないのではないか、というのが伊藤講師の主張です。そして、給与水準も上がり豊かになった途端、コスト競争力がなくなり、給与水準の低い韓国や中国にとって変わられてしまったと考えるのが正しいのではないか、という見方です。

現在の経営陣について、特に問題だと感じているのは、若い人たちから上がってくる新しい事業モデルのアイディアなどについて理解しきれないまま、自分の成功体験(といってもそれほどの体験でもないのだが)に基づいて、「自社の強みが生かせないじゃないか」とか「我が社がやる必然性がどこにあるのか?」などと言って潰してしまっていることです。

みなさんの会社がすべてこのような状態にあるとは思いませんが、もしも、当てはまる部分がかなりあるということであれば、対策が急がれます。会社を成長させていくために、このような経営陣に対してどのような施策があり得るのか? 次回はそこについて考えていきましょう。



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