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コラム

第三回 構造的な問題1:役員レベルの問題への対処策

2020.09.09

第2回で指摘した「役員レベル」の問題に対してどのような対応策があるでしょうか?有効と思われる4つの処方箋をお示ししたいと思います。ご自分の会社でどのくらい実現性があるか、想像しながらお読みいただければと思います。
>>第二回 構造的な問題1:役員レベルの問題はこちら

処方箋1:報酬委員会の設置 まず第一に考えられるのはこれでしょう。報酬委員会はすでに導入されている企業も多いかと思います。社外取締役を中心に報酬決定委員会を作り、毎年毎年経営陣がどのような成果を上げたかレビューを行い、報酬を決定するというものです。長年の貢献によって自分は役員になっている、これからがんばるべきは社員である、というような考えを排除し、緊張感を持っていただこうということです。役員を「上がり」のポジションにはしない、ということです。
ただし、報酬委員会も常に有効であるとは限りません。ある企業では、報酬委員会が役員のアピール合戦の場となってしまっているという話をお聞きしました。役員が下に対して「私のために仕事をしろ。他の役員からの仕事は放っておけ」というような態度をとってしまっては、組織に壁ができるだけです。成果主義において個人の成果を強調しすぎるとチームワークがないがしろにされるのと同様に、役員に成果として何を求めるのか、設定の仕方を熟考する必要があります。(組織の壁が高いのは、上層部が協力し合わないからです。)
経営陣の仕事は何か?それは会社の向かう方向=ビジョンを示すとともに、そこに向かって会社を運営していくことです。現代はVUCAの時代であり、新型コロナとともに生きなければならない時代です。ひと昔前までとは経営環境が全く異なります。そうなると役員同士が知恵を出し合って方向を見定め、協力し合って会社を運営していかなくてはなりません。報酬委員会のメンバーに対して役員が自分個人の成果をアピールするような場にしてはならないのです。

処方箋2:経営陣の意思決定力の磨き直し 上述の通り、経営陣の仕事はビジョンを示すとともに、そこに向かって会社を運営していくことです。さらに、上場企業であれば、株主からは利益成長を求められます。その期待に応えるために事業ポートフォリオを入れ替えたり、投資など中長期的な経営資源の配分について思い切った意思決定をしたりするのが役員の仕事です。 私は研修の仕事やコンサルの仕事をする際には、必ずその会社の過去15年くらいの株価の推移をチェックします。そうすると、この15年くらい、多少の上下変動はあるものの、中心線を取るとほぼ横ばいという企業が実に多いのです。皆さんの会社はどうでしょうか?
もし15年くらい横ばいであるなら、「役員の意思決定力」あるいは「実行力」は問い直される必要性があります。

従って、やらなければならないのは役員の「能力開発」です。社長から直接オーダーがない場合に、人事部門から「役員の能力開発のための研修」を提案するのは難しいかも知れません。もし難しいのであれば、次期役員候補を徹底的に鍛え上げて、数年間かけて役員を入れ替えていく、という方が現実的かも知れません。
次期役員候補の意思決定力を鍛えるには、2つのプログラムが有効です。

一つは、「現役員のシャドーイング」です。次期役員候補で構成される「シャドー役員会」を発足させます。役員会で決議しなくてはならない事案について、リアルな役員会とシャドー役員会の両方を開催して、それぞれで意思決定を行い、終了後、検討のプロセスや結論の違いについて、現役員と次期役員候補で話し合う場を設けるというものです。 実は、現役員が自分たちの意思決定力に自信がある場合と、自信がない場合では進め方を変える必要があるのですが、ここでは詳しい方法は割愛します。 現役員が自分たちの意思決定力に自信があり、次期役員候補の育成に熱心であるなら、次期役員候補にとっては、自分の視座や視野が適切か、自分の判断軸は明確か、などを振り返るとてもよい機会になります。一方、現役員からみれば、次期役員候補が何をどのように考えたかがつぶさにわかるので、誰が次の役員にふさわしいか、判断材料を増やすことができます。

もう一つのプログラムは「シナリオプランニングとリベラルアーツ」を同時に学ぶことで、どのようなことが起こっても先を見通し正しく決断できる力を高めるプログラムです。

ある企業の社長と面談をした際、その方が面白いことをおっしゃいました。「あることが起こると、その波紋が広がる。水面に何かを落とせば円状に波紋が広がるが、世の中は3次元だ。だから何かが起こるとその波紋は四方八方に広がり、その先端は球体になっているはずだ。」と。たとえば、武漢で新型コロナが発生したことで、それは政治、経済、社会、技術などあらゆる面に影響を与えて広がりました。その社長は、あることがらが起こったときに何が連鎖的に引き起こされるか、球体の表面で何が起こるかを予測できる能力を開発し、社員が正しく判断し動けるようにしたいとおっしゃるのです。これはシナリオプランニングと呼ばれる世界です。

一方で歴史に詳しい方であれば、近代以降の歴史を振り返ったとき、世界各地でいろいろな事象が発生しながらも、その根底では「大きな物語」が進行していることを感じる方も多いのではないかと思います。また、人口動態を詳しくみれば、資本主義が今後どうなるか、いつごろ終焉するかもおおよそ見当がつきます。
つまり、ある事象がおこるとそこから引き起こされるシナリオは無限にあるわけではなく、実は蓋然性の高いシナリオの数はそれほど多くないのではないかということです。
シナリオプランニングの能力と歴史観を併せ持つことが、目の前のビジネスにおける日々の意思決定の質を高めるのにとても役立ちます。

1と2を実施することで、役員の、それが無理であれば次期役員候補の意思決定力を磨こうということです。次期役員に2を実施した上で、1を実施すれば、次期役員候補の方が的確な意思決定ができ、またその根拠を現役員にも明確に説明できますので、現役員に対して相当大きなプレッシャーをかけることも可能です。

処方箋1、2は現役員に直接的・間接的にプレッシャーを与えて、「役員=“あがり”のポジション」という認識を払拭することに効果があります。

処方箋3と4は第4回 でとりあげます。

>>HRBPの設置や各種人事施策の強化を通じて戦略人事を実現されたいという方はこちらもご一読ください。

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