Leadership Insight

新たな働き方としてのハイブリッドワークとリーダーが採るべきアプローチ

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/12/09

世界的なパンデミックが起こる前、オンライン会議では、8割の参加者が1つの部屋にいることが当たり前でしたが、一方でその他2割のリモートワーカーは、そのことについてよく不満を感じていたものです。その2割の参加者は、同じ会議の参加者なのに自分が「部外者」のように感じていたという報告があります。会議の音声が聞き取りにくい、グループの会話に入りづらい、会場の空気を読んだり、議論に参加するのが難しい、などの声が聞かれました。

すでにリモート勤務をしていた社員の多くは、コロナウイルスが世界的に流行したことで、平等な環境になったと感じたようです。誰もがどこかから電話をかけているので、会議により参加しやすくなったと感じているのです。

これまでにないレベルのバーチャルなチームコラボレーション、柔軟な勤務時間、通勤時間の短縮などにより、パンデミックの間に世界の生産性が劇的に向上したことは、広く報告されている通り、疑う余地もないことです。ただし、その一方で、一部の個人や組織は間違いなく高い代償を払うことになりました。

ワクチンの接種率が上がり、パンデミックによる制限が解除される地域も出てきた今、リーダーたちはオフィス勤務とリモートワークを組み合わせながら働く、“ハイブリッドワーカーをリードしなければならないという新たな現実に直面しています。

対面式の仕事に復帰する時期や方法は、企業や組織によってそれぞれ異なります。また、広い意味では、多くの組織が通常の状態に戻ることを望んでいる一方で、生産性の向上を維持し、燃え尽き症候群の蔓延を食い止めたいと考えています。

ハイブリッドな働き方というニューノーマルへの移行

リモートワークへの移行は、2020年の米国での緊急在宅勤務施策がきっかけだったかもしれませんが、現在の新しいハイブリッドな働き方に関する計画は、受け身的ではなく、より慎重になってきています。

まだ詳細は明らかになっていませんが、ひとつだけ確かなことがあります。それは、パンデミック後の仕事の世界は確実に変わっていくだろうということです。

マッキンゼーの調査によると、10社のうち9社が今後、リモートワークとオンサイトワークの併用を計画しているとのことです。ハイブリッドワーカーやハイブリッドチームというもの全てに通用するモデルはありませんが、ハイブリッドというと、一般的には、リモートで働く社員、オンサイトで働く社員、そして両方を組み合わせて働く社員がいる環境を指します。

この新しい働き方は、特に最初は難しいかもしれません。

リーダーは、従業員の好みの違いと、継続的な生産性やコラボレーションへの欲求とのバランスを取る必要があります。あるメンバーはオフィスに戻りたがっているかもしれませんが、他の多くのメンバーは自宅で仕事を続けたいと思っています。

実際、従業員の大半は、柔軟な働き方やリモートワークの選択肢を残してほしいと答えています。ある調査では、64%が3万ドルの昇給よりも恒久的な在宅勤務を希望するという結果も出ています。

そのため、ハイブリッドワーカーに関する規則や、マネージャーがいかに効果的にハイブリッドチームやバーチャルチームを率いることができるかが、今後、多くの業界で人材を惹きつけ、維持するための鍵となると考えられます。

ハイブリッドワーカーをリードするための5つのヒント

このようなハイブリッドな働き方へのシフトは、リーダーやリーダーシップにどのような影響を与えるのでしょうか。

ハイブリッドチームを率いるには、変化への適応力と試行錯誤への寛容さが必要です。この新しく変化する環境において、リーダーは以下の5つのステップを踏むことで最も成功すると考えています。

1.ハイブリッドワークの新しい点、これまでと異なる点を認識する

リーダーはまず、この環境は新しく、異なるものであり、ある人にとってはうまくいっても、すべての人にとってはうまくいかないということを認識することから始めるべきです。リーダーは、対面であれ、リモートであれ、あるいはそれらの組み合わせであれ、その選択がキャリアを制限するものではなく、その貢献が評価されることを従業員に確信させる必要があります。また、チームが効果的に協力し合えるような環境を整えなければなりません。

不安や不満を打ち明けることができる、心理的に安全な職場環境づくりに努めましょう。また、チームメンバーが、どこにいても率直な会話ができるように、必要なスキルを身につけられるようにしましょう。

皆さんの組織でコーチング文化を発展させるためには、真実と勇気をもって会話することが必要ですが、そうすることで、ハイブリッドワーカーは、より革新的なソリューションを見出したり、士気や生産性の向上を達成することができるはずです。(また、これはリモート勤務の従業員がいる場合の、強固な組織文化の構築にも欠かせません)。

2.ハイブリッドワーカー同士の共感、公平性、インクルージョンを育む

チームミーティングやグループコールなどのインクルーシブな習慣を持つことに努めましょう。2020年、誰もが自宅で仕事をしていた時代、多くの人がバーチャルな会議で貢献することの難しさを身をもって体験しましたが、それはすでにリモートワークをしている人たちにはよくわかっていたことでした。

オフィスでの勤務が再開し、新たにハイブリッドワーカーやチームが加わったとき、これらの教訓を念頭に置いて、インクルーシブなミーティングが開催できるようにしましょう。意図的かつ明確に定義されたプロセスがなければ、対面式の仕事に戻った従業員が昔の習慣に戻ってしまい、知らず知らずのうちにオフサイトで働く同僚を排除したり見落としたりしてしまう可能性があります。

また、新しいハイブリッドワーカーのアイデンティティを確立するために、チームの規範と期待を共有するための時間を設けるようにしましょう。チームの目的や目標、仕事のプロセス、ミーティングの頻度、意思決定の方法などを全員が理解する必要があります。次のような状況について検討してみましょう。

  • 個人がハイブリッドワークを選択している場合、どの日に出社してもらうのが良いでしょうか。
  • チームミーティングでは、どのようにしてオンサイトの参加者とリモートの参加者のニーズに応え、効果的に貢献することができるでしょうか。
  • チームのゴールと成果をサポートするために、コミュニケーションツールやテクノロジープラットフォームをどのように活用するのがよいでしょうか。

これらの疑問を解決することで、リーダーはハイブリッドワーカーの間にインクルージョン(一体感)とコネクティビティ(つながり)を育むことができます。また、テクノロジーツールやプラットフォームを使用することで、リモートワーカー同士の距離感を縮め、全員のニーズが満たされるようにすることができます。(これはバーチャルチームやミーティングを管理するために推奨されるベストプラクティスのひとつですが、これはハイブリッドワーカーの状況にも当てはまります。)効果的なチームのリーダーであれば、メンバーがどこにいようとも、全員を参加させることが可能なはずです。

3.短期学習能力とレジリエンスのマインドセットを育成する

新しいハイブリッドな働き方においては、将来の計画も変わります。

前述のマッキンゼーの研究でも、研究者たちは、より多くのリモートワーカーのためにプロセスを設計したり、組み変えたりする際には、「テスト&ラーニング(試行錯誤)」のアプローチを取ることを厭わない組織の方が、より高いレベルの生産性を実現していることがわかっています。

ハイブリッドな働き方を成功させるためには、新しい状況に適応して成功する能力、すなわち短期学習能力(Learning Agility)学習のアジリティが不可欠です。リーダーは数週間に一度、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか、チームメンバーと話し合う時間を設けるべきです。また、組織内の他のハイブリッドチームのリーダーとの交流も必要です。彼らの成功例や課題が何かを探ってみましょう。

リーダーとそのチームが適用できる、短期学習能力を向上させるためのヒントを紹介します。

この未知の領域では、レジリエンスがこれまで以上に重要となる一方で、燃え尽き症候群が引き続き問題となっています。だからこそ、リーダーは自らの心身の健康を優先し、ハイブリッドワーカーの模範となるべきなのです。可能な限り以下のことを実践してみましょう。

  • 個人的にも仕事上でも、人間関係を大切にすること。
  • 定期的な運動と毎晩の睡眠を優先すること。
  • 精神を落ち着かせる時間を作ること。
  • 休憩時間を尊重し、オフタイムに従業員に連絡を取らないようにすること。

なぜレジリエント・リーダーシップが重要なのか、そしてレジリエントになるための8つの方法についてはこちらをご覧ください。

4.方向性、整合性、コミットメント(DAC:Direction/Alignment/Commitment)に細心の注意を払う

CCLでは、リーダーシップとは社会的なプロセスであると考えています。リーダーシップがうまく機能しているときは、個人が協力し合い、一人では達成できなかった結果を出すことができます。リーダーシップのためのDACフレームワークは、皆さんの新しいハイブリッドな働き方の成功を測るのにも役立ちます。

  • チーム内の方向性ははっきりしていますか?言い換えると、チームのメンバーはグループ全体の目標に同意していますか?
  • 皆さんのグループはアライメントが取れていますか?つまり、異なるタスクや役割を持つメンバーが互いに協調性をもって仕事をしていますか?
  • 最後に、コミットメントはありますか?つまりグループに対して相互に責任感を持っていますか?チームに強いコミットメントがあれば、チームはグループの成功と幸福に責任を感じます。高いレベルの信頼と心理的安全性を得ることができます。

現在のハイブリッドワーカーのDACレベルをパンデミック前と比較してみましょう。(皆さんのチームのDACにアクセスできるCCLの無料診断ツールをお使いいただけます。)ハイブリッドモードに移行し、DACレベルが安定または向上していれば、それは物事が順調に進んでいることを示すサインだと考えるべきです。逆に、DACが低下している場合は、グループ内での仕事のやり方が本来あるべき姿ではないと考えましょう。

DACは、ハイブリッドモデルと同様、常に進化していることを忘れてはいけません。自分の組織にとって何がベストなのかを発見していくうちに、途中で壁にぶつかることもあるでしょう。リーダーができる最も重要なことは、変化を受け入れ、課題を学習の機会と見なして、先の見通しを立てることです。

5.ハイブリッドチーム内と組織間のバウンダリースパニング(境界を越えた協働)に注力する

通常の仕事では、リーダーは組織の垣根を越えて協力しなければなりません。具体的には、部署や階層の異なる同僚とのコラボレーション、外部のステークホルダーとの協働、多様なグループをまとめることなどが挙げられます。また、遠隔地にいる従業員を管理すれば、地理的な境界を越えることにもなります。これは、現場で働くチームメンバーと、リモートで働くチームメンバーがいる場合に、最も重要な点となります。

皆さんの組織内でハイブリッドな働き方を検討する際には、組織内の各チームのネットワークを意識的に考えてみましょう。以下の点について確認してみてください。

  • 皆さんのチームは他のチームとどのようにつながっていますか?
  • 皆さんのチームは、そのチームとどのように関わり合うのが良いですか?
  • 現在、皆さんのチームはどのように境界を越えて活動しているのでしょうか?
  • ハイブリッドな職場環境で、部門間の交流、より良い会話、効果的なコラボレーションを促進するにはどうしたらよいでしょうか?

ハイブリッドチームになると、境界を越えて協力したり仕事を進めたりする際に新たな課題が生じるかもしれませんが、今日の最も差し迫ったビジネス上の課題に対する解決策は、多くの場合、複数の境界が交差するところにあるものです。

ハイブリッドワーカー達は、リーダーが変化に対応・適応し、俊敏で協力的な考え方で未来を受け入れるのを目の当たりにすれば、きっと同じように行動するようになるでしょう。