Leadership Insight

これからのリーダーとしての必須知識:社会的アイデンティティ(Social Identity)の重要性について

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/06/16

近年、ますます浸透するグローバル化、COVID-19によって半ば強制的に導入されたものの、「新たな働き方」として定着したと言っても良いリモートワーク・リモートマネジメント、資本主義の限界と格差社会の解消に向けた動きなどが活発化され、これまで以上に多様な働き方・労働力が急速に誕生しました。

職場でのDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)について行動を起こす組織全体としての取り組みは重要ですが、永続的なパフォーマンスを生み出すには、それだけでは不十分です。従業員の多彩な経験の力を活用し、新しい人的資本経済の中で成功したいリーダーは、あらゆる境界を越えて協力する方法を理解する必要があります。リーダーは、チームがその潜在能力を最大限に発揮できるように、人々のさまざまな経験を理解し、考慮しなければなりません。このための最初のステップが『社会的アイデンティティを理解すること』なのです。

社会的アイデンティティとは?

社会的アイデンティティは、人々が自分自身や他の人を特定のグループのメンバーとして分類または識別するために使用するラベルのようなものです。一般的な社会的アイデンティティには、世代、民族、人種、宗教、性別、性的指向、国籍、障害、政治的所属、交際状況、職業、社会経済的地位が含まれます。

社会的アイデンティティは、皆さんの「自己概念」の1つです。つまり、自分を人としてどのように見るかということです。皆さんの個人的なアイデンティティ (例えば、背が高い、良心的であるなど、自分自身を説明するために使用する個人的な属性) に加えて、社会的なアイデンティティは、私たちの価値観、私たちが自分自身や他の人について語るストーリー、ある特定の行動に向けて私たちを動機付けるものなどが含まれます。

社会的アイデンティティがDE&Iの文脈の中でどのように役立つかを理解するには、次の4つのことを覚えておくと役立ちます。

社会的アイデンティティはダイナミックに変化する

まず人が社会的アイデンティティをどのように獲得するかについてですが、これには決まりきった方法はありません。皆さんは特定の社会的アイデンティティグループに生まれることも (例えば、与えられた世代に生まれることも)、特定の選択の結果として社会的アイデンティティを獲得することもできます (例えば、医者になること)。また、実際の経験が新しい社会的アイデンティティを作成する場合もあります (たとえば、事故や病気によって能力ステータスが変わる場合があります)。目に見える社会的アイデンティティもあれば、目に見えない社会的アイデンティティもあります。社会的アイデンティティの中には、生涯にわたって保持するものもあれば、生涯を通じて変化するものもあります。

誰もが複数のアイデンティティを持っており、その組み合わせが重要

社会的アイデンティティはしばしば単一のカテゴリー (例えば、「共和党員または民主党員」、「黒人または白人」) の観点から語られますが、私たちはそれぞれ、私たちの生活経験や相互作用に影響を与える独自の方法で組み合わされる複数の社会的アイデンティティを持っています。たとえば、お金持ちか貧しいかどうか、異性愛者かLGBTの価値観の持ち主かどうか、など複数のアイデンティティを持っていることの方がむしろ普通なのです。

社会的アイデンティティは文字通り社会によって形作られる

社会と文化は、人々の違いがいつ、どのように社会的アイデンティティになるかを決定します。たとえば、現在のほとんどの社会集団では、目の色は社会的アイデンティティと見なされていませんが、肌の色は社会的アイデンティティと見なされています。社会的アイデンティティは規範に依存しているため、社会的アイデンティティと見なされるものと見なされないものは、時間の経過とともに、また異なる文化において変化する可能性があります。

状況に応じて、どの社会的アイデンティティを強く意識するかが変わる

特定の社会的アイデンティティは、特定の状況や環境でより意識されるようになります。たとえば、アメリカの白人が多く居住する地域に住んでいる白人のアメリカ人であれば、自分の国民性について深く考えること機会はあまりないかもしれません。しかし、もし皆さんが中国で駐在員の立場に立つとしたら、突然、「アメリカ人であること」という社会的アイデンティティ」が強く意識されるようになるかもしれません。なぜなら、それは皆さんの経験をどのように解釈するかだけでなく、他の人からどのように見られるかに影響を与える可能性が高いからです。

社会的アイデンティティは、人間として、私たちは自分自身とお互いを社会的アイデンティティラインに沿ったグループに分類することのできる強力なサインである一方でこの分類は、思い込み、固定観念、先入観、偏見の基礎となってしまうことがよくあります。また、特定の行動をとることの動機付け要因として機能することもよくあります(たとえば、社会的アイデンティティに基づいて動員、発言、または組織化するように求められる場合があります)。

社会的アイデンティティグループは、不平等な権力や特権の根底にあることもよくあります。社会的アイデンティティの微妙な違いを理解することは、組織のDE&I取り組みにおいて重要なステップです。社会的アイデンティティを見るときのレンズに無意識的にかかるバイアスや偏見を意識して取り除くことができるために、次のようなセルフチェックが有効です。

1.皆さんの社会的アイデンティティをできるだけ多く挙げてください。

人種、性別、民族、宗教、世代、社会的/関係的役割、職業、国籍、性的指向、障害、などのカテゴリーを考慮してください。

2.以下のような問いかけに対して考えてみてください。

  • 皆さんが自分自身を人として見る上で最も中心的な社会的アイデンティティは何ですか?それはなぜですか?
  • 他の人が皆さんへの扱いに最も大きな影響を与える社会的アイデンティティはどれですか?また、それはなぜですか?皆さんの答えは環境(例えば、職場、家、友達と)によって変わりますか?
  • 職場で隠している自分の社会的アイデンティティはありますか?それは皆さんや皆さんの周りの人にどのような影響を与える可能性がありますか?皆さんが皆さん自身について他の人に知ってほしいと思っている社会的アイデンティティはありますか?
  • 皆さんの社会的アイデンティティに基づいて、他の人は皆さんについてどのような仮定を置いていると思いますか?逆に皆さん自身は他の人の社会的アイデンティティに基づいて、他の人々についてどのような仮説を持っているでしょうか?(あの人は〇〇だから××するに違いない、等)

3.皆さんのさまざまな社会的アイデンティティが皆さんにどのような影響を与えるかを考えてください。

  • 特定の社会的アイデンティティを持っていることで、情報や予算といった経営資源や、経営幹部へのアクセスが可能になっているでしょうか、それとも制限されているでしょうか?
  • 自分自身の仕事をコントロールしたり、他の人の仕事を指導する場合に有利に働いているでしょうか、それとも制約が生じるでしょうか?
  • 意思決定の決定についてはどうでしょうか?
  • 職務上の地位または個人的な関係を通じての影響力の行使にはプラスに働いているでしょうか、それともマイナスの影響があるでしょうか?

社会的アイデンティティを念頭に置いて多様なグループをリードする

今日の社会において社会的アイデンティティを無視してダイバーシティマネジメントを行うことは不可能です。リーダーとして待ったなしに求められる基本概念ですが、その有効な活用手段はまだまだ発展途上とも言えます。しかしながら次に挙げるようなポイントを押さえておくだけで、思いもよらない失敗を避けることができ、独自の多様性マネジメントの方法論を打ち立てるための一歩を踏み出すことができます。

<組織内での社会的アイデンティティへの注目>
皆さんのチームや部署で社会的アイデンティティがどのように機能するかにより注意を払うようにしましょう。皆さんの組織では一般従業員レベルではダイバーシティがありますが、意思決定者レベルでは同じようにダイバーシティは確保されているでしょうか?意思決定レベルでもダイバーシティがあるとしても、予算の意思決定権限グループはダイバーシティに富んでいるでしょうか?一部の社会的アイデンティティにはダイバーシティがあるように、他の社会的アイデンティティにもダイバーシティがあるでしょうか?チーム内、組織内で置き去りにされているように感じる人の社会的アイデンティティを十分に理解しているでしょうか?

<日常的な多様な社会的アイデンティティへの接触>
偏見とステレオタイプを減らすための最も単純で最も有効な戦略の1つは、異なる社会的アイデンティティグループの人々の接触機会を増やすことです。日常業務ではあまり接することのない社会的アイデンティティグループが交わることができる機会の創出を検討してみてください。 (例: プロジェクト、社交イベント、修養会、またはチームビルディング活動)。

<社会的アイデンティティの理解を促進してEquity=公平性を高める>
公平性とは、成功するために必要となる資源や機会を人々に提供することです (よく比較される概念に「平等」がありますが、平等とは、すべての人に同じリソースを提供することです)。組織のダイバーシティとインクルージョンを考えるとき、Equity=公平性は重要な要素です。公平性がなければ、ダイバーシティとインクルージョンのイニシアチブは効果が薄れ、すぐにその重要性が忘れ去られてしまうでしょう。

 

もちろん公平性を実現していくことは非常に難しい場合もあります。そのような場合でも社会的アイデンティティに関する理解を活用することで、公平性を高める機会を明らかにすることができます。たとえば、新しいポリシーを作成するときは、さまざまな社会的アイデンティティの組み合わせを持つ人々にどのように影響するかを調べます (たとえば、有色人種の人々にどのような影響を与えるか? シングルマザー? 黒人女性? 障害者? ノンバイナリーの人? 大学を卒業していない年配の労働者?教育?)

過小評価または抑圧されている可能性のある社会的アイデンティティがないか、特に注意してください。あるポリシーが特定のグループに追加の負担を与える可能性があると思われる場合は、それを調整する方法を検討し、影響を受ける可能性のある社会的アイデンティティを持つ人々の声も積極的に聞きましょう。

多様性(Diversity)を重要視して多彩な人々を惹きつけ、それらの人々を包括的にリードし、パフォーマンスをあげることができれば、同じ組織内に全く異なる世界観を実現する事すら可能なのです。