Leadership Insight

社内政治を科学する:社内政治の6つの側面

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/07/16

リーダーは社内政治に精通しているべきなのか?

皆さんは「社内政治」と聞いて、どのような感覚を持たれるでしょうか?

一般的には「社内政治」と聞くとネガティブなイメージを持たれるかもしれませんが、私達のリーダーシップに関するリサーチによれば社内の政治に精通した人々は、そうでない人に比べてキャリアが描きやすく、昇進しやすく、キャリアを狂わせるような事件に遭遇する可能性が低いことがわかっています。

組織内の政治的側面は時々物議を醸し、熱く議論されているトピックでもあります。組織の規模が大きくなれば、そこで働くマネージャーの多くは「大企業病」を嘆き、物事を前に進めるために必要となる政治的な動きを避けてしまう傾向があります。しかし、どのような組織であれ、組織の中に政治が発生するのは必然でもあり、避けて通ることのできない議題であることもまた現実なのです。

政治的なスキル、または組織内の政治事情に精通しているということは一般的にはネガティブなイメージを持たれがちですが、本質的に悪いことではありません。

政治的スキルの欠如を克服するための最初のステップは、社内の政治を仕事生活の自然で中立的な部分として受け入れることです。政治そのものは良いものでも悪いものでもないのです。実際、リーダーにとって政治的スキルは必要不可欠であり、大事なのはそのスキルを適切に使用することです。リーダーは組織内の政治に精通し、適切にスキルを使用することで、自分自身や他の人に前向きで建設的な結果を生み出すことができます。

つまりここで私たちが政治的スキルとしているものの定義は『組織、チーム、および個人の目標を達成するために、利害関係者の関係性を最大化および活用する能力』というものなのです。

政治に精通したリーダーは、政治的スキルを使用して、組織のリーダーシップの課題にうまく対処し、チームのパフォーマンスと生産性を向上させることができます。

政治的スキルの6つの特徴

組織内・社内政治に精通したリーダーは、

  1. 変化に敏感
  2. 対人影響力
  3. ネットワーキング能力
  4. 話す前に熟考する
  5. 上位のポジションの人も動かせる(または影響力を行使できる)
  6. 誠実に見える(誠実に見えるように自分のリーダーシップブランドを管理している)

といった特徴がありますが、さらに詳しく見ていきましょう。

より政治的側面に精通する方法

予算編成、戦略立案、部門間の調整など、それぞれの業務で必要となる知識やスキルと同様に、これらの業務をスムーズに進め、実行に移すには社内政治に精通している必要があり、特に組織を超えて影響力を行使することに熟達している必要があります。

次の6つのスキルに焦点を当てることで、組織内の政治に精通し、高いパフォーマンスを出すことにつなげていくことが可能になります。

1. 知覚を研ぎ澄ます:組織内にある政治的な動きに敏感なリーダーやマネージャーは、言語情報だけのコミュニケーションのみならず、非言語情報をキャッチすることも得意としており、他の人の動機を直感的に感じることができます。自らが置かれている状況で自分自身の立ち位置や他者の状況をより広く・深く知覚することで、自己認識を向上させ、他者の行動をよりよく解釈することができます。

2. 影響力の行使の仕方を訓練する:他人に対人関係を効果的に発揮する人は、良好な関係を築き、コミュニケーションを取り、他人に味方になってもらうための労力を割くことで強い対人関係を築きます。対人関係のリーダーシップの力に慣れることで、判断力を高め、いつ・どのような状況で自分自身の意見を主張することが適切かを判断することができます。その結果、より協力的な関係が生まれます。影響力の行使に熟練したインフルエンサーは必ずしも公然と政治的であるとは限りません。彼らは政治的なゲームであってもルールを守り公正プレイするだけです。

3. 効果的にネットワークを構築するために学ぶ:できるリーダーは効果的にサポートを得るためにネットワークを構築することを怠りません。常にネットワーキングに注意を払い、どうすれば困難な課題であってもサポートが得られるのか、交渉をスムーズに進めるためには誰とつながっておくべきなのか、余分な争いを避けるには誰に最初に話を持って行くべきなのか等、有益な関係性を常に構築・維持しています。ネットワーク活用に熟練したリーダーはネットワークにいる他者の力を引き出し、自分自身のタスクとチームのタスクの両方の実行を効果的に行います。しかしリーダー達は一方的にネットワークからの支援を得るだけではありません。彼らは自らもネットワークに対して価値をもたらすことを忘れることはありません。

4. 話す前に熟考する:政治に精通したリーダーが衝動に駆られた発言をすることは極めて稀です。自分の考えやアイディアを他者に提示するために、コミュニケーションのタイミング、場の設定、巻き込むべき人々等、様々な観点からコミュニケーションプロセスを熟考し、適切な方法を選択します。

5. 職位を超えて影響力を行使する:リーダーは部下に対してだけではなく、必要な場合、上司、そして上司の上司にまで巧みにコミュニケーションできる必要があります。一方で私たちの調査によると、上位者へのコミュニケーションに長けている人は、上司のニーズに応えることに非常に多くのエネルギーを注ぎ込み、ときに自分のチームに対してのコミュニケーションが疎かになることがあるため、ここではバランスが重要です。

6. 誠実であり続ける:政治に精通した人は、政治に精通しているからこそ高い水準の行動規範、信憑性、正直さ、および誠実さを大切にし、オープンなコミュニケーションを通じて信頼関係を創り上げます。皆さんが誠実であり続けることを通じて、他者も皆さんに対して誠実であり続けてくれるようになります。

ダイバーシティの観点から見た社内政治力

ここまで組織内の政治に精通することの重要性と精通するための重要スキルを見てきましたが、社内政治に精通する事は女性にとって特に難しい場合があります。

私たちが主催する女性のリーダーシップ育成プログラムでは、組織の政治に関する話題と影響力の開発に特に焦点を当てた内容を取り入れています。そして何年にもわたって、女性リーダーがこのトピックに苦労しているのを見てきました。彼女たちにとっては政治的なスキルがリーダーシップの重要な要素であるという考え方が不快に聞こえるのです。一部の女性リーダーにとっては社内政治は、ネットワーキングと同じように、本物ではないと感じてしまうことがあるのです。

別の研究では社内政治についての考え方について性別による違いも明らかにしています。女性にとっての組織とは「より政治的な仕組み」であると認識しているという研究もあり、女性にとって政治的な動きをするのは大変苦痛に感じられる一方で、男性は社内政治を当然のこととみなして、政治的な動きをすることにそれほど苦労をしないということも言われています。

さらには不公平なことに誠実でないとみなされた女性は男性よりも厳しく罰せられることもあります。

リサ・マイニエロという研究者は、1994年に目には見えないが明らかに存在するキャリアについてのガラスの天井を破った女性幹部たちを対象にした独創的な調査で、インタビューした女性の多くが「非政治的」であり、政治的なことを避けていることを発見しました。しかし実際には女性幹部が非常に社内政治に精通していたのです。この研究成果を元にマイニエロはさらに、女性のキャリアアップには政治的なスキルが不可欠であると述べています。女性は男性よりも意識して社内の内部情報にアクセスし、ガラスの天井を破るのに必要なネットワーキングが必要だからです。

今日、ジェンダーダイバーシティは大きな進歩を遂げているとも言えますが、それでも女性にとっては昇進の機会、メンターやスポンサーへのアクセス、リスクを取るためにサポートが十分ではない状況に陥りがちです。だからこそ、女性が社内政治に精通し、必要な政治的スキルを開発することがこれまで以上に重要になっているのです。

女性リーダーたちに向けた私たちのメッセージは、「政治に精通する」「社内政治に詳しくなる」という言葉だけを捉えて、それらを避けるのではなく、組織内には必ず政治が存在し、それが自然なことであるとまずは考えることが重要であるということです。そして、より効果的なリーダーになるために政治的スキルを高めることに焦点を合わせることが重要です。意図的に リーダーシップブランドの構築に取り組み、自分らしさを失うことなく、誠実で本物の方法で他者をリードする能力を磨いていくのです。