Leadership Insight

今の組織にますます柔軟性が求められている理由とは

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/12/13

ほんの少し前まで、職場での柔軟な働き方に対する対応が必要となるのはあくまでケースバイケースの出来事でした。例えば、火曜日に子供を学校に迎えに行くために早く帰らなければならない社員がいた場合、その社員は水曜日に残業してその時間を補填していたりしました。上司は必要に応じて柔軟に対応していましたが、それは原則ではなく例外的なことでした。

ですがそれはコロナ禍の話であり、その頃は、75%以上の会社でリモートで働く従業員の割合が10%もありませんでした。2020年に在宅勤務がより多くの企業で導入されるようになってからは、企業は新たなバーチャル環境への適応を迫られ、企業文化や従業員の生産性に関するこれまでの考え方を捨てなければならなくなり、必然的にこれらの統計や従業員の柔軟性の定義は転換点を迎えました。

なぜ組織は柔軟でなければならないのか?

コロナワクチンを接種する人が増え、企業が対面式の仕事への回帰を始めている今日、「ノーマルなビジネス」のあり方は少し変わったように見えます。これまでと違うのは、それが従業員主導のモデルであるということでしょう。このように従業員が交渉力を持つことはもう何年も目にしなかったことです。

パンデミックの際、組織の存続のために多くの労働者が長時間働きました。オフィスが閉鎖され、企業が収益を失っても、従業員の努力でその危機を乗り越えてきました。おかげで生産性を高く維持することはできたのですが、逆に燃え尽き症候群も多く発生しました。この1年半、持続不可能なペースで働き続けた結果、一旦立ち止まって、自分の人生やキャリアで本当にやりたいことは何かを自問するようになった人が多いのではないでしょうか。このように労働時間を増やすことが生産性の向上にはつながらず、どこかで糸が切れてしまうことに多くの人が気づいたのです。

2021年4月、米国労働統計局は400万人が辞職したと報告しました。これはいわゆる「大辞職(Great Resignation)」という現象で、多くの人が自分の仕事を見つめなおし、自分の人生に何を求めるのかに向き合った結果といえます。

彼らが求めているのは、職場における柔軟性です。しかも、それはコロナ以前の柔軟性の定義に戻ることではありません。彼らは、いつ、どこで仕事をするかということに対して、組織が考え方を一新してほしいと願っているのです。

それはなぜでしょうか?彼らは在宅勤務をすることによって、いくつかの重要なことに気付いたのです。まず、通勤の手間が省けたことです。第二に、コストを大幅に削減することができたという点です。中には、年間平均5,000ドル以上の節約になったという報告もあります。最後に、生産性の向上も実感しました。

Envoy社が最近発表した「職場復帰に関する報告書」によると、調査対象となった従業員の約半数が、パンデミック後、今後職場に柔軟性がもたらされなければ仕事を辞めると答えています。ここでいう柔軟性とはつまり、在宅勤務とオフィスでの勤務を組み合わせたハイブリッドモデルのことです。

実際、労働者の大半は、柔軟な働き方やリモートワークの選択肢が残ることを望んでいるといいます。ある調査では、64%の労働者が、30,000(300万円以上)ドルの昇給よりも永続的な在宅勤務を希望しているという結果も出ています。組織が将来的に成功したいのであれば、柔軟性を持たせるべきかどうかではなく、どのように柔軟性を持たせるかが重要です。

職場で柔軟性を持たせるには

皆さんの組織における柔軟性のあり方は、組織の業務内容や従業員からのフィードバックによって異なります。ハイブリッド・ワークフォース・モデルを導入している組織もあれば、一定の基準で従業員に自分のスケジュールを決めてもらうようにしている組織もあります。

今後、成功の責任を負うことになるのは、マネージャーやリーダー一人ひとりです。職場での柔軟性とは、個人が上司と協力して、自分の立場や責任に最も適したスケジュールを決める機会を持つことを意味します。

この新しいフレキシブルワークモデルを推進するのは従業員であるため、人事の幹部はプロセスの初期段階から従業員を巻き込んで検討する必要があります。従業員が在宅勤務やオフィス勤務についてどのように感じているかを調べるためにアンケートを実施している企業や、座談会を開いたり、上司とチームのミーティングを予定したりしている企業もあります。その目的は、生産性とエンゲージメントの向上につながる職場をどのように構築するかということです。

ハイブリッドやその他のフレキシブルな職場モデルへの移行が進むにつれ、公平性が問題となるかもしれません。なぜ同じ職場の同僚なのに、在宅勤務できる人とできない人がいるのかを理解しようとするほど、公平性をめぐる疑問が出てきます。

そのため、組織の方針には、役割ごとの基準を盛り込む必要があります。オフィス勤務が必要な仕事と、リモートでもできる仕事の判断基準を明確にしましょう。

また、従業員がいつどこで働くかにかかわらず、キャリアアップの機会やリソース、リーダーシップ開発への投資は公平に分配されるべきです。従業員と密にコミュニケーションを取り、彼らが疑問に思っていることに対処することで、信頼の文化を育むことができます。

職場での柔軟性が企業にもたらすメリットとは

職場環境に柔軟性を持たせることは、従業員個人にメリットがあるだけではありません。主に、生産性の向上、優秀な人材の確保・維持・定着といった面で、従業員が働く企業や組織にもメリットがあります。

1.生産性の向上

従来、ほとんどの組織では、従業員の生産性を最大限に高めるためには、現場にいる必要があると考えられていました。  しかし、The Conference Boardが2021年4月に実施した調査によると、人事部のリーダーの6割が、過去1年間で組織の生産性が実際に向上したと報告しています。

2.優秀な人材の採用と維持の強化

生産性の向上に加えて、職場での柔軟性は、組織が既存の人材を維持し、士気を高め、新しい人材を惹きつけるのに役立ちます。従業員がどこでも仕事ができるようになれば、人事部のリーダーやリクルーターは、最高の人材を広く探すことができます。

また、柔軟性は企業文化の一部となるので、優秀な人材の採用と維持にも役立ちます。かつて、企業は物理的なスペースや快適な設備によって自社の文化を定義づけようとしていました。多くの企業がオシャレなオフィス、おいしいコーヒーやスナック、コラボレーション用の快適なワークスペース、珍しい内装などをアピールしていました。しかし、皆がバーチャルで仕事をするようになると、そのようなことも必要なくなります。

3.エンゲージメントレベルの向上

新しいバーチャルな環境の中で、人事部のリーダーたちは、社員の意欲と生産性を維持するために、どのようにリモートワークの文化を構築し、維持するかを改めて検討しています。ウォーキングトレイルや広いカフェテリアなどの特典よりも、チームワーク、コミュニケーション、エンゲージメントが重要視されるようになった環境では、職場に柔軟性をもたせることが文化的に重要な差別化を図るための鍵となります。

定期的なコミュニケーションで柔軟性を保とう

職場の柔軟性が生産性を向上させ続けるために、マネージャーはコミュニケーションとコーチングという2つの重要なスキルを磨く必要があります。これらのスキルは、リーダーが従業員との定期的なコミュニケーションをとる際に特に重要になります。その際には、以下のことが求められます。

  • 何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかを理解するために、アクティブリスニングのスキルを使う。
  • 組織のニーズを伝える。
  • 従業員のパフォーマンスに対する効果的なフィードバックを行う。
  • 能力開発の必要性がある場合は、コーチングを提供する。

ここで重要なことは、職場に柔軟性を持たせることは一朝一夕にできることではなく、プロセスであるということをリーダーが理解することです。コロナのパンデミックは間違いなくこの数十年間で最大の混乱を招いた出来事です。今後、新しい働き方が浸透していく中で、組織は機敏に対応し、試行錯誤を重ねていく必要があります。

職場が急速に変化し続ける中、従業員のニーズに対応し、前向きで成功する文化を確保するために、組織は意図して新たな能力を構築する必要があります。個人レベルで柔軟性のあるリーダーを育成することが重要なだけでなく、組織全体としても職場で柔軟性を取り入れ、次の課題に俊敏に対応できるようにしましょう。