Leadership Insight

職場の心理的安全性とは?

LEADERSHIP INSIGHT / CCL | 2021/10/26

ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)に関する研究結果を見ると、ほとんどの人事担当者とシニアエグゼクティブが「思考の多様性と包括性は組織に恩恵をもたらす」という意見には賛同しているようです。

異なる人生経験を持つ人たちで構成されたグループには、多くの貴重な意見が集まります。そして、多様なグループは、同じような人生経験を持つ人々のグループよりも、問題を認識し、創造的な解決策を提示することができます。

しかし、チームメンバーの中に発言することに抵抗を感じる人がいたらどうでしょう?懸念を共有することを恐れたり、難しい質問をすることに抵抗があったりしたら?拒絶されるのを恐れて、革新的なアイデアを提案することを避けているとしたら?

残念ながら、多くの人がこのように感じているといわれています。2017年のギャラップ社の調査によると、社員10人のうち3人が「自分の意見は職場では重要ではない」と強く思っているようです。

職場での心理的安全性の欠如は、ビジネスに大きな影響を及ぼします。まず、うまくいっていないことがあるのに、それを口にすることができなければ、組織は失敗を防ぐことができません。また、社員が完全にコミットしていない場合、組織はすべての人材の強みを活用することもできなくなります。

「真の変化をもたらすアイデアを生み出すためには、人々が思ったこと・感じたことを気軽に発言し、素朴な疑問を投げかけ、現状に異議を唱える必要があります」と、私達CCLのCOOであるデビッド・アルトマンは言います。

「職場での心理的安全性とは、誰もが常に親切であるということではありません。葛藤を受け入れ、声を上げ、さらにチームと皆さんがお互いに支えあっていることを知るということなのです」。

「The Fearless Organization: Creating Psychological Safety in Workplace for Learning, Innovation and Growth(恐れのない組織::心理的安全性が学習・イノベーション・成長をもたらす)」著者であるエイミー・エドモンドソン博士は、真に革新的な文化を生み出すためは、人々が中途半端な考えを口にしたり、突拍子もない質問をしたり、大声でブレインストーミングをしたりすることが許されなければならないと述べています。

職場における心理的安全性の定義

心理的安全性とは、アイデア、質問、懸念、間違いなどを口にしたとしても、咎められたり、侮辱されたりしないという確信のことです。

特に、職場での心理的安全性とはどういうことでしょうか?

それは、皆さんが発言することによって、チームの誰かが恥ずかしい思いをしたり、発言を拒否されたり咎められたりしないという、チーム内で共有している信念です。

「心理的安全性が確保された職場では、スタッフは安心して自分らしくいられます。そのような職場では、自分をさらけ出して仕事をしても大丈夫だと思えるものです」とアルトマン氏は述べています。

職場における心理的安全性の4つのステージ

チームや組織に相互の信頼や敬意を払う風土が定着していると、メンバーは自由にコラボレーションでき、リスクを取っても安心していられるので、結果的に迅速なイノベーションの実行が可能になります。

心理的に安全な職場は、帰属意識から始まります。マズローの欲求階層では、人間は基本的な欲求が満たされないと能力を発揮できないと言われていますが、それと同じく、社員は自分が認められていると感じられなければ、組織を改善することができません。

「The 4 Stages of Psychological Safety (未訳)」著者であるティモシー・クラーク博士によると、社員が自由に価値ある貢献をしたり、現状に異議を唱えたりするには、以下の4つのステージを経る必要があります。

  • ステージ1 – Included (インクルージョンの観点からの安全性):インクルージョンの安全性とは、つながりたい、帰属したいという人間の基本的な欲求を満たすことを指します。この段階に達すると、安心して自分らしくいることができ、自分のユニークな属性や特徴を含め、ありのままの自分が受け入れられていると感じることができます。
  • ステージ2 – Safe to Learn (学習者の安全性):学習者の安全性とは、学びたい、成長したいという欲求を満たすことを指します。この段階に達すると、安心して質問をしたり、フィードバックを与え(受け入れ)たり、また試行錯誤を繰り返したりして、学習プロセスを通じて交流することができます。
  • ステージ3 – Safe to contribute (コントリビューター(貢献者)の安全性):コントリビューターの安全性とは、変化をもたらしたいという欲求を満たすことを指します。つまり、安心して自分のスキルや能力を使って有意義な貢献をすることができるという状態をいいます。
  • ステージ4 – Safe to challenge (チャレンジャー(挑戦者)の安全性):チャレンジャーの安全性とは、物事をより良くしたいという欲求を満たすことを指します。つまり、変革や改善の機会があると思えば、安心して声を上げ、現状にチャレンジすることができるという状態をいいます。

職場の心理的安全性を高めるためにリーダーができる5つのこと

社員が4つのステージを経て、最終的に対人関係でのリスクテイクを安心して行える環境を整えるために、リーダーはチームの心理的安全性を育み、促進する必要があります。ここでは、心理的に安全な職場を作るための方法をご紹介します。

1.心理的安全性を明確に優先する

職場での心理的安全性を高めることの重要性を、組織のイノベーション、チームのエンゲージメント、インクルージョンを促進するという高い目的に結びつけて話してみましょう。自らが社員に望む行動の模範となり、職場で共感を示すことでその環境を整えていきましょう。

2.全員が発言することを促す

純粋な好奇心を示し、率直さと真実を語ることを尊重しましょう。誰かが勇気を出して現状を覆すような発言をしたときには、心を開き、思いやりと共感をもって接しましょう。コーチング文化のある組織では、真実を語る勇気のあるチームメンバーが多くなるものです。

3.失敗したときの対処法の規範を確立する

実験をしたり(合理的な)リスクを取ったりすることを咎めてはいけません。失敗や失望から学ぶことを奨励し、失敗から得られた教訓を率直に共有しましょう。そうすれば、イノベーションを妨害するのではなく、促進することができます。

4.新しいアイデア(それがラフなものであっても)を受け止める

アイデアを受け入れるときは、そのアイデアを広くサポートする体制で臨みましょう。熟慮して首尾の整ったアイデアだけに耳を傾けますか?それともまだ十分に練られていない、創造性に富んだ既成概念にとらわれないアイデアを受け入れますか?新しいアイデアを受け入れ、チーム内でより革新的な考え方を育みましょう。

5.建設的な対立を受け入れる

対話と建設的な議論を促進し、対立を建設的に解決するようにしましょう。リーダーは、対立を変化につなげるための議論の場を用意し、心理的安全性を高めるためのチームの期待値を設定するようにしましょう。チームで以下のことを話し合ってみてはいかがでしょうか。

  • うまくいっていないことがある場合、その懸念をどのように伝えればよいか?
  • 言いにくいことを同僚に伝えるためにはどうすればよいか?
  • 相反する意見をまとめるための基準とは?

これらは一見難しそうに思えますが、心理的安全性は組織の風土や文化を表すものです。文化を変えるとなると、途方もない作業のように感じてしまうかもしれません。

ですが、アルトマン氏は、「変革は小さな一歩から始まる」と述べ、「少しずつ変化させ、少しずつ成果を上げる」という考え方を提案しています。

「日々の目標に対して1%ずつ改善できるかと問われたら、ほとんどの人ができると答えるはずです。皆さんも同僚に毎日1%ずつ改善していこうと呼びかけてみましょう。そうすれば1年後には30倍以上も良くなっているはずです。」

チームメンバーが職場で心理的安全性を育む方法

リーダーはチームの文化を形成する役割を担っていますが、心理的に安全な職場環境に貢献するのは、チームメンバーの一人一人です。

「文化とは、簡単に言えば “私たちの仕事のやり方 “のことです。私たちは皆、自分のチームと組織の両方で、職場での仕事やり方に役割を持っています」とアルトマン氏は言います。

以下のステップを実践して、生産的な対話と議論を促進しましょう。

  • パワフルでオープンエンドな質問をして、事実だけでなく感情や価値観を理解するために、積極的に、そして熱心に耳を傾ける
  • 失敗は学びと成長の機会であることを認識し、失敗を共有することに同意する。
  • 感謝であれ失望であれ、自分の気持ちを伝えるときは、素直にそれを表現する。
  • 助けを求め、求められたときに助けを惜しまない。
  • ひとりの「ヒーロー」ではなく、多くの専門家がいると考える。
  • 感謝の気持ちを伝えることで、チームメンバーの自己肯定感を高める。

最も重要なことは、個人間のポジティブなやり取りや会話は信頼の上に成り立つということです。チームメンバーがリスクを冒したり、助けを求めたり、ミスを認めたりしたときには、それを大目に見てあげましょう。その代わりに、彼らも皆さんに同じことをしてくれるはずです。

また、リーダーは、組織全体の会話の質を高めるための投資することができます。文字通り、会話の質が向上すれば、文化も向上します。会話のスキルが向上し、心理的に安全な環境が整えば、同僚は言葉にできない不安を共有したり、実施前に十分にストレステストを行った上で解決策を提案したりすることができるようになります。

職場環境で対人関係のリスクを取ることを恐れなくなれば、組織文化はより強固で、ダイナミックで、革新的なものになるでしょう。

リモートワークにおける心理的安全性とは何か?

一見、リモートワークで働く社員がいると、心理的安全性を確保するのが難しいように思えるかもしれません。事前にスケジュールを決めて、画面越しにしか会話ができない状況で、どうやって信頼関係を築けばよいのでしょうか。

アルトマン氏によると、リモートワーク、在宅勤務は(チームメンバーがちゃんと意識していれば)、人脈を築き、心理的安全性を高めるユニークな機会を与えてくれるのだそうです。

アルトマン氏は、ビデオ会議と通常の対面式の会話を対比させながら、「オンラインの対話では、相手の言葉を聞くだけでなく、相手の感情を見たり感じたりすることができます」と語っています。

「多くの文化的慣習では、一度に30秒、あるいは数分間、人を見つめることは気まずいものです。しかし、Zoomでは誰もあなたがどの人を見ているのかわからないので、感情的知性を応用する能力が高まることもあります」と述べています。

職場での心理的安全性を確保するためには、チームメンバーが勇気を持って弱い部分を見せることも必要ですが、バーチャルな職場環境はその機会も与えてくれます。

アルトマン氏は、「人前で弱音を吐くのは難しいかもしれませんが、コンピュータを使えば、チャットで弱音を言いやすくなることもあります。また、どのように伝えたいかをじっくり考えることができ、さらに相手のコメントを見て反応を探ることもできます」と提案しています。バーチャルな環境で効果的なコミュニケーションを実践する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

目標は、心理的に安全な職場環境を作り、チームメンバーが自分の発言を否定される心配をしなくてもよい状態にすることです。このような環境では、対人関係においてリスクを取ることが当たり前になるだけでなく、チームメンバーは変化に対してより順応できるようになります。つまり、メンバーそれぞれが組織全体の課題と機会を理解し、組織をより良い場所にするための自分の役割を認識できるようになるのです。